
体長10cmほどの小魚
博多では『あぶってかも』と呼ばれる
魚釣りの際、エサ取りの代表格としてあげられる魚のひとつが『スズメダイ』。
撒き餌をまくと、一瞬にして海面が真っ黒になるほど群れてくる、やっかいなエサ取りだ。
スズメダイ科、スズメダイ属のスズメダイは、水深2m~15mほどのところに群れを成す、体長10cmほどの小魚である。
このスズメダイ、博多では『あぶってかも』と呼ばれている。
何故このように呼ばれるのかは諸説あるようであるが、炙って食べると鴨のように美味しいことからこのように呼ばれるようになったという説が。
ほんまかいな・・・。
この『あぶってかも』。エサ取りであるからして、ワシらの釣り人にとっては、はっきり言って邪魔な存在なのである。
本命に餌を届ける前に、こいつらが食ってしまうからだ。
当然、釣れてもリリース。
何故か?
小さいし、食べようと思わないし、食べるにしても何だか骨が硬そうだし・・・。
等などの理由により、実は博多にわ男、一度もこのスズメダイを食べたことがなかった。
実は知る人ぞ知る博多の名物料理
『あぶってかも』は実は博多の郷土料理と言っていいものなのだ。
スズメダイをウロコがついたまま(はらわたもそのまま)塩をする。
そしてウロコがついたままの状態で塩焼きにして食べるのだ。
ウロコごと食べるって・・・なんだか堅そうじゃんか・・・。
しかも揚げるならまだしも、塩焼きにするだけなんだから、ウロコが口の中で、もぞもぞしそうで食べる気になれない・・・と思い、今まで食べたことがなかったのだ。

ある日。
近所のお店で、黒板に書かれた日替わりメニューの中に『あぶってかも』と書いてあった。
スズメか・・・。
一度も食べたことがない・・・。
試しに食べてみるか、と単なる好奇心で注文してみた。
出てきたのは、こんがりと焼けたスズメダイ。
ちまちまと食べるのが苦手なので、思い切り頭からかぶりついてみた。
美味いじゃないかあ!!!
なんだ、この小さい魚の美味さは。
ワシは頭からがぶりといったが、骨などはさほど気になるほどではない。
とにかく、魚の旨味が凝縮されている感じで、酒の肴にはもってこいではないか。
一番気にしていたウロコは、まったく邪魔にならず、むしろカリカリで良い感じ。
一匹骨ごと丸っと食べた。
今まで食べなかったことを少し後悔したぞ。
また、この時期のスズメダイは産卵期を迎え、雌は腹に卵をもっている。
これが身の旨味と合体して、美味さが倍増。
かああ!!こんなに美味いとは知らなかった。

こんなに美味いのならば、釣れたときには4~5匹もって帰り、塩焼きにしてよいではないか。
ご飯のおかずにはならないかもしれないが、酒の肴には十分いける。
しかも丸焼きでいいのだから、処理する手間もいらない。
またひとつ、先入観で食べていなかった魚の美味しさをひとつ知った。
エサ取りもすてたものではなかったのだ。
ちなみに・・・
このスズメダイ、ネットで1kg3000円で売られていた。
けっこうするね・・・。
